2010年8月17日火曜日

おぼん

 
 お盆前、お参りに来てくださったお寺の和尚様との世間話

お正月や春のゴールデンウイークは国民の休日。
国で決められたその日はお休みです。

でも、「おぼん」は国民の休日ではありません。

「でも、当たり前のようにほとんどの会社がお休みします。
ふしぎですねー。 」

今年も帰省する人たちで、交通機関は何処も混雑のニュースが流れます。

我が家も娘がだんな様と帰省し、皆で主人と私の実家を訪ねました。

久しぶりに訪れたそれぞれの実家は、嫁いだ娘や孫達が新しい家族を連れて集まります。

そして今年は、何を云っているのか分からない言葉をいっぱい並べて、
部屋中を駆け回る我が家の孫も加わって特別にぎやかです。

90才に近い父親は、ひ孫に手を引かれますます目じりが下がります。


ご先祖様に両手をあわせると、ぽっと手のひらが温かくなります。

ただただ、生かされていることへの感謝、
ただただ、つつがなく暮らせることへの感謝がこみ上げて来るのです

2010年8月9日月曜日

真夏日


 気温36度、湿度80
久々の福州は炎天の真夏日

「でも、クーラーはどこの工場もつけないです」
総経理の言葉通り、窓につけた送風機で 工場内はさわやかです。

ミシンの音が響く工場は、二品番が流れていました。
でも、指導したライン流しとは様子が違います。
同じ工程を二人の人が縫っています。

棚を見てみました。
前回あった仕掛かり途中の製品はありません
検査にも、プレスにも たまった製品がありません。
確かに流れはよくなっています。

午後、責任者の人たちとの話し合い

「室長さん、工場を見られて問題点があったら教えてください」

「なぜ、同じ工程を二人で縫うのですか」

洋服の一番のポイントは衿つくり、
洋服の中心に、形よくおさまらなくてはいけません。

表と裏になる二枚の生地を縫い合わせて出来上がった衿、
裏衿をつける人と、表衿を整える人、二人の人で衿つくりは出来上がります。

でも、二人で分けて縫うと 前の人の縫いが悪いから綺麗に縫えない、といって問題になるのです。
だから、二人で同じ工程を縫えば結果は同じでしょう、責任者のGさんはまじめ顔。

皆が私の答えを待っています。

「確かにそうですね。でも、動作研究をしてみてください。きっと同じではないですよ。
そしてもし、前の人が綺麗に縫っていなくて問題になるのならその問題点を解決しなく
てはいけません。

なぜなら、次工程はお客様なのです。」

通訳をしていた総経理の表情が変わりました。

「室長さん、わかりました。」

何も知らずに飛び込んだ縫製業界、苦しみの中で得たものは
彼の一生の宝になるでしょう。





2010年8月2日月曜日

ミシン音


 小さな工場は一日にかかる品番数は時によっては5品番以上
さらにロット枚数は10枚以下、
1品番、1枚のサンプル縫いもこなす生産工場

何とか出来上がり枚数を増やさなくては
ストップオッチ片手に
皆を追い込んだのは一ヶ月前

確かにみんなの動きに変化が出始めました。
でも、心まではつかめません。

毎日、納期に追いかけられながらの生産は
残業、土曜日出勤
それでも生産は追いつきません。

今週はついに工場に入って、見えない針とにらめっこです。

「室長、糸が違っていますよ」
そばで縫っていた若手社員に声をかけられます。

「そのパーツは裏において重ねた方が次の工程が楽ですよ」
今度はもう一人の若手社員

「有難う」
返す笑顔に、ミシンの音も上がります。

アイロンから出てくる 蒸気の音
後から追いかけてくる バキュームの音
ガッシャと跳ねる、穴かがりの機械音

工場は、いろいろな音が気持ちよく響きます。

オーケストラのような工場は
タイムを数秒縮める努力より
一緒に学ぶ大切さを、教えてくれるのです。

2010年7月26日月曜日

くじけないで


 今、ベストセラーになっている詩人柴田とよさんの取材をテレビで見ました。

優しいまなざし、きりっとした口元
ぴんと伸ばした後姿からは、とうてい99歳には見えません。

苦しいとき悲しいとき元気をもらったという読者の方が
どんどん増えているそうです。

「くじけないで」

ねえ、不幸だなんて
溜息をつかないで

陽射しやそよ風は
えこひいきしない

夢は平等にみられるのよ

私辛いことがあったけど
生きていてよかった

あなたもくじけないで


90年、生き抜いてこられた強さは
背中を、ぐんと前に押してくれるのです。









2010年7月20日火曜日

哺乳類


NHKで、哺乳類が人間にいたるまでどのようにして進化を遂げてきたのか
を放送されていました。

直径10キロの隕石衝突、それまで1億5000万年も君臨していた恐竜が一掃されました。
番組ではその後を生き延びた生物の戦いの物語が紹介されていました。

大陸移動の偶然に左右されていく地上の生き物達、
さまざまな地殻変化の中で爬虫類や鳥類たちは、地上に君臨すべく
さまざまに変化していきます。

立ちはだかる巨鳥や巨大ワニとの戦いののち
小型のままであった哺乳類はいつも負け組みでした。

小動物だった哺乳類が、なぜ進化を遂げてきたのか。
それは弱者だったがゆえに、厳しい環境におかれていたがゆえに
なしえた事だと番組は語っていました。

巨大な敵と戦うために、たえず工夫が必要だった。
そこに脳の発達の糸口があったと・・。

何万年もの歴史を経て、受け継がれてきたDNA

私たち人類は、工夫し努力していくのが命の源なのだと知りました。

2010年7月12日月曜日

相撲


昨日、野球賭博問題で大きく揺れた大相撲名古屋場所が初日を迎えました。
テレビ放映のない自粛した相撲業界

流れていく歴史の中で どよんだ空気に小さな風穴があきました。

確かに変えていくのは大変です。
変わっていくのは、もっともっと大変です。

でも、すべてを周りのせいにしていたら何も変わらない。

長い歴史を持つ国技

私たちから見ればとてつもない大きな組織です。

でも、どんな大きな力も、一つ一つを紐解いていったら
最後は個に行き着くように思うのです。

今、目の前にある事実

一つ一つを紐解いて、一つの線で結んだら見えてきたものがあります。
それは、自分が結んだこぶでした。
自分が歪めたねじれでした。

真っ直ぐなものを、ゆがんでみていた心です。

「33連勝より、いい相撲取りきった」

初日、圧勝した横綱白鳳の言葉です。

2010年7月5日月曜日

工場


 8枚の束
二つに折った後ろ身頃は、一枚だけ伸ばしてアイロン台の上に載っています。
定規で寸法を決めた折代を、すべるようにアイロンが動きます。
1mmの違いもなく折られた裾はまた二つに折られた元の位置に返します。

流れるように手の中で動いていくパーツたち
同じことの繰り返しの中で、競うのは昨日の自分です。

ライン縫製は、細かく分散された工程を一人ひとりを専門化することで
追いかけていくラインです。
追いかけられるのは前工程、自然にスピードが上がります。

でもリミットの生産は多品種、極少ロット、ライン縫製が組めません。

流れていくパーツたち、

昨日よりやさしさを
昨日より厳しさを

競っているのは昨日の自分。
追いかけているのは明日です。

磨きぬかれた工場は
やがて、研ぎ澄まされていくのです。