2014年3月31日月曜日

細胞


 3月30日、日経新聞の一面をいつものように読み聞かせする主人

「高級イチゴ翌朝に香港」  「えっ」
食器を洗う水道の音でよく聞こえません。
えーとね、香港郊外のフルーツ店でこの冬、イチゴ「紅ほっぺ」が飛ぶように売れた。
産地は徳島県鳴門市だそうです。
午前中に収穫すれば空輸で翌朝には香港に届く、「国内生産となんら変わらない」、
活用したのはヤマト運輸が手がける「国際クール宅急便」。

小口の荷物を一個から集配する宅配便が誕生したのは1976年、
「小さな荷物を何度も運ぶより大口の荷物を一度に運ぶ方が得だ」という
大量消費時代の常識に挑んだのはヤマト運輸の小倉昌男社長。
そして今、ヤマト運輸は、生産者とアジアの消費者をつなごうとしてるのです。

自宅を改造した事務所と工場の間の通路には、袋に入った小さな荷物がいっぱい並びました。
工場は男性社員の中に女性の社員はわずかです。女性用のユニホーム、注文の数も少量です。
ケースで出荷が当たり前の時代、邪魔物に思われた袋詰めされた小さな荷物。
小さいからケースの隙間にも入るし、助手席にだって積める、
こんなにおいしい荷物はないよ、会長の言葉に当時の運送業者さんは納得。
専用の袋を作ってもらって、小包便が誕生したのは1980年頃でした。

「細胞は嘘をつかない」
昨夜のNHKスペシャル、「人体ミクロの大冒険」で進行役を務められていたIPS研究で有名な
山中伸弥さんの言葉です。
細胞は経験したことを学習して強くなっていくのだそうです。
映像で見たのは視覚、聴覚、触覚で鍛えられた神経が、太く強くなってる事実でした。

同じものを見ても受け取る姿勢は様々です。
「細胞は嘘をつかない。」
明日の自分を作るのは、今の自分でしかないのです。









2014年3月24日月曜日

希望


 トヨタ自動車の創業者、「豊田喜一郎」をモデルにしたドラマ「リーダーズ」を見ました。

「車は輸入すればよい」、融資を否定し続けた日銀総裁は最後の決断の時、
「なぜ君は、世界の主流である大型車ではなく小型車にこだわるのか」
「それは、小型車が狭い日本の国土にあっているからです」
「なぜ君は、国産車にこだわるのか」
「それは、自動車産業がこれからの日本を豊かにするからです」
「なぜ君は、これだけ反対されているのに困難な道を選ぶのか」
「それは、誰でもが出来ない道だからです」

油が染み込んだ両手。
資源のない日本、そんな日本が世界で勝負するには、技術しかない、技術で勝負する、
いつも油もぶれで戦った技術屋の手でした。
日本を豊かにしたい、車産業が日本を救う、創業者の夢に社員は希望を託したのです。

「同じ道があるなら、苦しい道を選ぶ」
創業時代から会長が守り続けた信念です。
「日本一の女子作業服」、毎朝朝礼で唱和した言葉、
社員は会長の夢に夢を重ねました。

土曜日の夜、さわやかな吹奏楽の演奏会に招待状をもらいました。
白いシャツ、黒いパンツ、若いコンドル達は、タクトに合わせてその表情を変えていきます。
青春の真っ只中、未来へ羽ばたくその音は、調和の中に個性をみつめていました。

想像される厳しいレッスン
でも、子供たちがみつめるタクトの先に見えたのは、「希望」という名の光でした。













2014年3月17日月曜日

ヘリコブター


 「お婆ちゃん、なぜ怒りんぼしていないのに地震がおこるん。」
3月10日、震災の日の前日、テレビで3年前の東日本大震災の様子が放映されていました。
晩御飯の仕度をしているお母さんの側で、孫たちはテレビに見入っていたのです。

「それはね、土の下の、もっと下の下に火山があってね、それが爆発をおこすんよ」
正しいのかどうかわからない答えを、脅えた表情の二人に伝えました。
「そして、お家が壊れるんよね」
「津波がやってくるんよね」
「おもちゃも壊れるんよね」、二歳の弟も一生懸命話します。
「ガスが爆発するんよね、火事になるんよね」。
「この前、みんなで学校に避難訓練したよね、消防車に乗せてもらったでしょ、
お水も、とばしたでしょう、皆で助け合って逃げるんよ。だから大丈夫よ」

あんな答えでよかったのかなー。
真剣な表情の二人に、もっときちんと向かい合って話してやらないといけない事があったのでは、
寝ていても、心が落ち着きません

NHK特集ドラマ 「生きたい、たすけたい」
いつもなら、辛い悲しい番組はチャンネルを回してしまいます。
その夜、こみ上げる涙をぬぐいながら、救援のヘリコブターを見つめました。

小さな命を守るために一生懸命戦った先生と子供たちがいたことを
極限の中で、恐怖と戦い励ましあった人たちがいたことを、
国を超え、命を支えあった人たちがいたことを、
そして、生きたい、たすけたい思いが奇跡を起したことを
現実から目をそらさないで、
一人ひとり、一生懸命の命を伝えたい。





 




2014年3月10日月曜日

自転車


 五才の誕生日のお祝いに、孫と自転車を買いに行きました。
以前から下見に行っていたおじいちゃんは、朝から上機嫌です。

最初に行った自転車屋さん、子供の物なら何でも揃う大きなお店です。
こいのぼり、離乳食、子供服、おもちゃ、さらにその奥の壁際に自転車が並んでいました。
どの自転車がどんな機能があるのでしょう、
通路には自転車に乗って体験している子もいます。
でも、店員さんは居られないようです。
孫のお気に入りも見つかりました。でも、このまま購入するには少し不安です。

「もう一軒、見に行ってみようね。」

眠たそうな末っ子を抱いて、次の自転車やさんに行ってみました。
大きな建物の中には、いろいろな種類の自転車がいっぱい並んでいます。
早速店員さんが、好みを聞いて孫を乗せてくださいました。
その間にも、新学期を前に子供をつれたご両親が次々に入ってこられます。
お客様がいっぱい、店員の方が説明してくださる。
なんだかもう、私の中では「安心」という一文字が大きく膨らんでいきました。

価格も同じぐらいです。
ひょっとしたら、どちらの自転車を選んでも大きな差はなかったかもしれません。

違っていたのは、「安心」 という一文字だったのです。







2014年3月3日月曜日

だるまさん


 「切り捨ててばかりの人生だったよ。」
久々に見舞った口元からこぼれるのは苦しんだ人生のお話

経営するとは、社員の人生を預かることになる
そんな厳しい姿勢が、会社を守る姿勢が
厳しさへとつながりました。
その厳しさは人へではありません。
自分自身への厳しさでした。
はるか彼方に目指すところがあったから
見据える彼方があったから、必死な人生だったのです。

受け継がれた信念は
明日への歴史を刻んでいます。

人は、何処まで上っていくのでしょうか。
まだまだ、まだまだ、
新たな課題を見つけて、まだまだ、上り続けていくのでしょうか。
まだまだ、探し続けていくのでしょうか。

真新しい箪笥の上には、黒色のだるまさんが静かに座っていました。