30年前
雪の後のぬかるんだ泥道を5時間かけてたどり着いたのは
神々が集まる山ぶかい出雲の地
リミットがはじめて造る工場は大豆のにおいが焼きついた
醤油工場の建物を改造して造られていました。
それまで自転車の鉄を握っていた手を
やわらかい布におきかえての工場の創業者。
初めてミシンを扱う人たちにズボンの縫い方を指導します。
一番難しい男性のズボンの後ろについてるピスポケットは
細いループが上下に形よく並ばなくてはいけません。
満足がいかないまま後ろ髪を惹かれる思いで、帰途に着きました。
驚いたのはその一週間後、
二枚に分離されていたはずの生地は、同じ大きさの一枚に集約されていました。
ピスの幅に合わせて二本、平行に縫うはずだった縫い線は
一枚の生地の真ん中に長方形に縫われています。
社長のコメントは
「結果この形になればいいんだろ」
確かに見た目は同じでした。
それからしばらくして売り出された自動で縫えるように開発されたピス縫いミシンは
まさにこの発想だったのです。
曲げることも容易ではなかった鉄、曲げることはかんたんにできてしまう布
簡単にできないから、発想を変えて考えてみる。
さあ、明日から福州の縫製指導が始まります。
私も、曲がらない鉄を曲げて帰りたいと思うのです。
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