2015年5月1日金曜日

父へ


 目をつむると思い出すのは、いつも笑っている父の姿です。

絵が大好きだった父
老人大学で習った水彩画は70歳過ぎての手習いでした。
残された父の部屋には小さな皿が何枚も重ねてありました。
途中止めで完成されていない絵もたくさんありました。

水彩画はその色の濃淡さえも、顔料の一色一色で決まるのだそうです。
たくさんの皿の上に絞り出された顔料、
でも、絵筆につけたその一滴がシミになると 完成間じかの絵も駄目になってしまいます。
「アーもう止めた」
いつも東の窓に机を置いて太陽に向かって絵筆を握っていた父。
太陽に向かって、父は何度この言葉をつぶやいたのでしょうか。

「やさしい線を描くのは簡単じゃ、でもとがった線は難しい。」
孫達によく話していた言葉だそうです。
父にもらった鯉の滝登りの絵
滝つぼを背に勢いよく飛び跳ねているはずの鯉
でも父の描いた鯉は、何時までたっても滝を上れそうにありません。
弓を引く若武者を乗せた競争馬、今にも駆け出しそうなはずですが、
父の描く馬は農耕馬でゆっくりゆっくり歩きます。

それはそのまま父の姿です。
どんな時にも温厚でいやという事の出来ない父でした。
でもそんな父が私たち姉妹の誇りです。
90歳を過ぎても畑を耕し、自然と会話する父が好きでした。



























































































































































































































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