「私はね、山口県 萩の生まれでございます。」
そろえた指先は、テーブルにおいたティッシュを一筋一筋丁寧に伸ばしていきます。
「何でも、大切にしなさい。お母様から教わりました。」
「私はね、山口県 萩の生まれでございます。どうぞ、宜しくお願いいたします。」
同じ事の繰り返しの中に、会話にならない会話が続きます。
ここは、認知症の方の病院です。
知人を訪ねた私たちに、お話をされるお年寄りの記憶は何年前の今なのでしょうか。
「母はね、こう申しました。どんな時にも感謝の心を忘れてはけません。
その言いつけを守ってまいりました。」
仏様のような笑顔でお話されるご婦人の目から、涙が零れ落ちました。
「どうしてこんな事になってしまったかねー」 と知人、
「有難うございます。有難うございます。」 萩の人
会話にならないお二人は、遠い記憶の中におられるのでしょうか。
過去の日が、今日の日に重なっているのでしょうか。
●・・・ 今月の室長の言葉 ・・・●
親孝行な貴方は、誰もが持っていない光り輝く石を持っているのですね。暖かくつつむ石なのですね。
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