2010年11月29日月曜日

端切れ


 気になっていたのは、工場の隅の生地の端切れ
確かに分類され、棚に積んでありました。

でも、一向に動いている気配がありません。

なぜだろう、
なぜだろう

工場に行く度に気にかかります。

一枚一枚開いてみました。

なぜここは、鋏の跡があるのだろう、
なぜ、切らないといけなかったのだろう。

見えてきたのは小さな傷跡

工場は、小さな小さな積み重ね。

「たとえ、十円落ちていてもひらうでしょう」

まだ、家内工業時代の
会長の奥さんの言葉がきこえます。

2010年11月22日月曜日

もみじ


 庭のもみじが真っ赤です。
小雨の降る中、庭一面に散ったもみじは
赤い絨毯になりました。

もう、これで終わりだろう思ったその時
「有木家はつぶせない」
メイン銀行の支店長さんの言葉でした。

周り中が反対する中、
売り上げ以上の負債を抱えた会社を応援してくださった
今は亡き、某会社の社長さん

もう駄目だと思ったその時に
何故、たすかる事が出来たのでしょう。

「お願い、お願いのお四国から、
今日あるお陰に、ご先祖様に感謝のお四国に
今度はゆっくり廻ってくるよ。」

会長の頭の中は、もう違う景色が待っています。










2010年11月15日月曜日

神棚


 何でも上手に大工仕事をこなして下さるMさんにお願いして
工場の中央に神棚を作ってもらいました。

お納めするのは、会長がもらって帰ってくださった出雲大社の御札です。

榊をたて、お水をお供えしました。



副社長に合わせて皆で拍手を打ちました。

二礼四拍手、一瞬空気がかわります。

お腹にぐっとこみ上げてくるのは何でしょう。


40年前、小さな二階建ての工場は
会長の夢の一歩です。

多くの人に、ご縁いただいた工場は
今日も夢を追いかけているのです。

2010年11月8日月曜日


 早朝の山路は、霧で覆われていました。

長い歴史をかけて出来上がったもの
長い歴史の中で培われたもの

ひたすら守り続けた教えは
間口を小さくしてしまいました。

必死で結ばれた紐

一つ一つ解きはなしていくのは、
思いを共有する心です。

「室長さん、見てあげてください。
上手に縫われるようになりましたよ」

深い霧で覆われた
神話の里

ゆっくりゆっくり、霧は
晴れていくのです。




2010年11月1日月曜日

神様


 降り続いた雨が上がりました。
あたり一面刈り取られた稲の根っこに新芽が吹き出していました。
緩やかに傾斜した緑の橋げたの上を、追いかけっこした車たちが
足早に通り過ぎていきます。
どっしりと中国山脈の山々は、裾に白い衣をまといます。

突然会長がこられたのは、出雲工場に来て三日目の朝でした。

培われてきた40年の歴史
出雲大社はリミットカタログの最初の表紙を飾りました。

倒産寸前の時も、工場を閉鎖の危機も
出雲の大神様に守られての現在がある事

そして今、じり貧のみちしかなかった工場に
新しい若い力が加わり、また新しい道が見えてきた事

切々と訴えられた会長の途切れ途切れの言葉に
感激で涙を流してくれた新入社員の女の子

倒産寸前の時も、工場閉鎖の危機でさえ
信じてついてきて下さった古参の社員さん

ただただ、ひたすら、納期を守る事を絶対条件とし
ただただ、お客様だけを見つめてきた心に、
そっと、手を合わすのです。